数学オリンピックの存在を知っているだろうか。映画『サマーウォーズ』にも登場したことで知名度はあるが、「自分には関係ない」と思っている人がほとんどだろう。しかし実際には、数学が得意だという自負がある高校生であれば、誰でも予選突破を狙える世界だ。
本記事では、日本数学オリンピック(JMO)と日本ジュニア数学オリンピック(JJMO)の概要を紹介した上で、JMO予選の突破と大学受験の数学を両立したい人向けの参考書ルートを解説する。予選突破後に本戦・日本代表を目指す天才レベルの話は対象外だ。あくまで「予選を突破しつつ大学受験も制したい」という層に向けた内容である。なお、本記事は一般入試の受験者を主な対象としている。
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目次
・2. JMO予選の出題範囲と頻出3分野
・3. 参考書ルート①:基礎固め(青チャート)
・4. 参考書ルート②:整数・場合の数の核心(マスター・オブシリーズ)
・5. 参考書ルート③:図形分野の演習補強
・6. 参考書ルート④:難関大受験レベルの発展演習
・7. 参考書ルート⑤:大学受験を超えた数オリ専用教材
・8. 過去問と取り組む際の注意点
1. JMO・JJMOとは何か。基本情報と予選の実態
日本数学オリンピック(JMO:Japan Mathematical Olympiad)は、国際数学オリンピック(IMO)の日本代表を選ぶための国内コンテストだ。毎年11月に予選が実施され、成績上位の約200名がAランク(予選合格)となり翌2月の本選に進む。
- JMO(日本数学オリンピック): 高校生以下が対象(大学教育を受けていない20歳未満)。毎年11月に予選。予選は12問・4時間・1問1点の短答式。Aランク者が翌2月の本選へ進む。
- JJMO(日本ジュニア数学オリンピック): 中学3年生以下が対象。同じく11月に予選を実施(現在はオンライン)。
- 参加資格: 原則として誰でも参加可能。特別な推薦や資格は不要。個人申込の受験料は4,000円。
- 推薦入試の特典: Aランク・Bランク者は、一部大学の特別推薦入試で優遇を受けられる制度がある。
重要なのは、予選突破(Aランク)を目標に設定した場合、数学に自信がある高校生であれば十分に狙える現実的な目標だということだ。本選以降・日本代表への道は本当に一握りの天才の世界だが、予選突破という思い出と実績は、数学が得意な高校生なら誰でも手が届く。高校生以下しか受験できない大会である以上、今を逃したら一生挑戦できない。それだけでも参加する価値は十分にある。
2. JMO予選の出題範囲と頻出3分野
JMO予選の出題範囲は、世界各国の高校程度の数学だ。重要なのは微分・積分、確率・統計、行列は範囲外であるということ。数学ⅢCが終わっていない高校でも、十分に参加・対策ができる。
- 必須分野: 数学Ⅰ・A全般(データの分析を除く)が中心。数列・方程式・不等式も含む。
- 準必須分野: 数学ⅡBの内容も一部出題される(微分・積分は範囲外)。数学Cのベクトルは補助的に役立つ場面あり。
- 範囲外: 微分・積分、確率・統計、行列。
そして特に重要なのが、頻出3大分野だ。予選12問の構成を見ると、この3分野の問題が占める割合が圧倒的に高い。
約数・倍数・素数・不定方程式・合同式など。数オリの花形分野。ここを制することが予選突破の最短ルート。
数え上げ・対応・鳩の巣原理など。問題の質が高く、思考力が直接問われる分野。
合同・相似・三角形・円・空間図形など。視覚的なひらめきと論理の両方が必要。
この3分野で合計9〜10問を確実に正解できれば、残りの簡単な方程式・計算問題と合わせてAランクのボーダー(例年5〜8点)を突破できる可能性が高まる。つまり、闇雲に全範囲を勉強するより、この3分野に絞って集中的に仕上げることが合理的だ。
3. 参考書ルート①:基礎固め(青チャートなどの網羅系参考書)
まず前提として、数学Ⅰ・A・Ⅱ・B・C(ベクトルまで)の基礎が仕上がっていることが出発点だ。青チャートなどの網羅系参考書でこの範囲を一通りこなせていない人は、まずそちらを優先すべきだ。
- 青チャートが仕上がっている: 次のステップへ進んでOK。
- 本番まで時間がある: 焦らず青チャートから仕上げる。基礎なしで数オリ対策をしても砂上の楼閣になる。
- 本番まで時間がない: 青チャートを一旦飛ばして次の参考書に進み、並行して基礎を固めるのもあり。
数学オリンピックに興味を持つような数学好きであれば、青チャートレベルは問題なくこなせているケースが多い。しかし念のため自分の立ち位置を確認してから先に進んでほしい。
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4. 参考書ルート②:整数・場合の数の核心(マスター・オブシリーズ)
基礎が整ったら、いよいよ数オリ対策の核心に入る。ここで使うべき2冊が東京出版「大学への数学」シリーズの「マスター・オブ・整数」と「マスター・オブ・場合の数」だ。
この2冊は受験界でも非常に有名で、難関大学を目指す受験生の間でも定番の参考書だ。整数・場合の数はまさに大学入試でも頻出の難問分野であり、数オリの予選対策と大学受験対策を同時に進められる、まさに一石二鳥の教材だ。
- 問題量が豊富: 第1部から第4部まで構成されており、問題数が多く「足りない」と感じることはまずない。
- レベルの幅が広い: 第1部・第2部は基礎〜標準、第3部が入試レベル演習、第4部が発展・数オリレベルの難問ゾーン。
- 数オリ直結の内容: 第4部は数学オリンピック予選問題も含まれており、そのまま実戦的な対策になる。また、大学教育でかじるような内容(合同式・ディオファントス方程式など)も学べる構成になっている。
- 大学受験にも完全対応: 第3部だけでも入試本番で戦える実力が身につくとされる。損をする参考書では一切ない。
整数と場合の数はJMO予選の最重要2分野だ。この2冊に真剣に取り組むだけで、予選突破に必要な実力の大部分が身につく。
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5. 参考書ルート③:図形分野の演習補強
整数・場合の数の次は、3つ目の頻出分野である図形(幾何)だ。図形に関しては、基礎知識は青チャートで十分カバーできる。追加で演習量を確保したい場合の参考書として、「大学入試 苦手対策シリーズ 三角比・平面図形・空間図形に強くなる問題集」が使える。
ただし、この参考書はあくまで練習量を積むための演習書という位置づけだ。基礎的な知識の整理は青チャートをベースにしつつ、問題に慣れる目的で活用するのがいいだろう。
整数・場合の数が最優先。図形はその次。まず2つの「マスター・オブ」シリーズを仕上げてから図形演習に移るのが効率的。
問題をこなすだけでなく、補助線の発想や円に関する定理の使い方など、「なぜそう見えるか」を意識して練習すること。
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- ※ まずは青チャートで図形問題の基礎から
6. 参考書ルート④:難関大受験レベルの発展演習
整数・場合の数・図形の3分野が仕上がったら、次は難関大受験向けの参考書の中から数オリに近い問題を選んで解く段階だ。
具体的には以下のものが有効だ。
- 「新数学演習」(東京出版・大学への数学): 最難関大向けの演習書だが、問題の質が高く、その中から整数・場合の数・図形の問題を選んで取り組むと数オリの対策になる。
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- 早稲田大学(商学部)や医学部、一橋大学の過去問の対象分野: 予選の出題範囲に対応した分野(整数・場合の数・図形)に絞って解くことで、入試対策と数オリ対策を兼ねられる。
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- ※ 易しめだが、問題の近さは早稲田商学部が1番。たくさん問題があるので、まずはこれ
- ※ 問題難易度や大学受験最優先なら東大、一橋大、医学部の問題をおすすめします
この段階は「大学受験の勉強をしながら自然と数オリの力もつく」という状態だ。両立効率が最も高いゾーンなので、大学受験生として時間の使い方を崩さずに取り組める。
7. 参考書ルート⑤:大学受験を超えた数オリ専用教材
ここからは、大学入試の範囲を若干超える内容を含む数オリ専用の教材を紹介する。これらは両立を重視する人には「やりすぎ注意」のゾーンだが、大学受験で思わぬ得点につながることもある。
①「数学オリンピックへの道」(朝倉書店)
アメリカの国際数学オリンピック代表チームのトレーニング問題を精選した本で、数論・三角法・組合せ法の分野別に刊行されている(全3冊)。JMOのために作られた本ではないが、数オリ対策の基礎書として最適だ。基礎事項の確認→基本問題→上級問題という3部構成で、扱っている問題が海外のものなので過去問とのかぶりを気にせず使えるのも利点だ。難しい内容も含まれているが、大学入試に直結する知識も多い。難しいところにこだわりすぎず、吸収できる範囲で使っていこう。
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②パーフェクトマスターシリーズ(数学オリンピック財団公式推薦)
数学オリンピック財団が公式に推薦している参考書シリーズで、初等整数・平面幾何などの分野別に刊行されている。JMOやIMO、アメリカのUSAMOなどから厳選された問題を収録しており、その分野を深く仕上げるには最良の一冊だ。ただし本選以降の水準の問題も含まれているため、大学受験に比重を置く人はやりすぎに注意。両立を目指す人は使う分量を絞ること。
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③「中学生からの数学オリンピック」(安藤哲哉 著)
タイトルに「中学生から」とあるが、決して侮ってはいけない。JMOやJJMOの問題は意外と頭の良い中学生でも解けるレベルの問題が含まれており、この本はJJMOやJMOを目指す人向けの参考書・自習書として非常に優秀だ。
最大の特徴は、日本の過去問を一切使わず、諸外国や国際大会の問題480問を精選して掲載している点だ。そのため日本の過去問とのかぶりが発生しない。パーフェクトマスターシリーズなどJMOの過去問から問題を引用しているシリーズとのかぶりを避けたい場合、この本が最もお勧めだ。問題は学年別・レベル別に整理されており、自分のレベルに合わせて効率よく学習できる。
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- ※ タイトルに「中学生から」とあっても高校生が使う価値は十分にある
8. 過去問と取り組む際の注意点
JMO・JJMOの過去問も当然やるべき教材だ。「数学オリンピック」過去問集(日本評論社)として5年ごとにまとめて刊行されており、予選・本選・IMOの問題と解説を収録している。JJMOの過去問もJMO対策として有効で、同じく12問形式のため試験形式に慣れる意味でもおすすめだ。
- 予選前半(1〜8問目あたり)に集中せよ: 例年、後半(10問目以降)は数学偏差値が70〜80を超えるような人間でも歯が立たないレベルの問題が並ぶ。その難問を解こうとして深追いするのは時間の無駄だ。
- 両立が前提なら「絞る」が正解: 本当に本戦・日本代表を目指すなら話は別だが、大学受験との両立が目的である以上、難問への深追いは受験勉強の時間を圧迫するだけだ。
- 6点前後でAランクを狙う意識: 予選のボーダーは年によって5〜8点と変動するが、易しめの問題(前半)を確実に取り切ることが最重要だ。
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数学オリンピックは、挑戦するだけで得られるものが多い。予選突破という目標を持つことで数学の思考力が底上げされ、大学受験の数学にも直接プラスになる。ワクワクしながら、ぜひチャレンジしてみてほしい。