現代文はセンスとかフィーリングとか運ゲーと言われることがよくあります。しかし本当にそうでしょうか。英語でも古文でも文法を使って読むのに、現代文だけなぜか雰囲気で読まれています。
現代文の不安定さの正体は、日本語文法を理解しないまま読んでいることにあるのではないかというのが本記事の提言です。なお、本記事は一般入試の受験者を対象としています。
目次
・2. 助詞・助動詞を知るだけで読解の精度が変わる
・3. 「日本語は母語だから文法不要」は本当か
・4. 感覚読みと構造読みのハイブリッドが最強
1. 英語・古文では当たり前なのに、現代文だけ雰囲気で読む矛盾
英語では関係代名詞が出てきたら「ここからここまでが節で、この名詞を説明している」と塊を作って読みます。省略があれば「ここには目的語が省略されている」と補って読みます。単語だけで読むのではなく、塊と塊の関係を理解しながら読むのが当たり前です。
古文でも同じです。主語を補い、助動詞の意味を確認し、文構造を理解して読みます。ところが現代文では、同じことをしていない人がほとんどです。主語も取らず、述語も見ず、雰囲気で読んでいる。英語や古文でそれをやれば確実に怒られます。
本来は現代文でも同じで、日本語も塊ごとの関係で読む言語です。主語の塊、述語の塊、修飾の塊があり、それらの関係を見ながら読むことで論理が見えてきます。現代文が「センス科目」と言われる本当の理由は、文法を使って読むという発想自体がないからではないでしょうか。
- 主語を取らない
- 述語を見ない
- 修飾関係を見ない
- 文の塊を意識しない
- 接続語だけで読む
2. 助詞・助動詞を知るだけで読解の精度が変わる
日本語は助詞で文の関係が示される言語です。例えば次の2文を見てください。
犬が人を噛んだ = 人を犬が噛んだ
助詞が変わると意味が逆になる
太郎が花子を殴った ≠ 太郎を花子が殴った
英語では語順が意味を決めますが、日本語では助詞が意味を決めます。つまり助詞を正確に読めるかどうかが、日本語読解の精度を大きく左右します。
助詞の使い分けを意識するだけで文構造が見える
彼は来た → 「彼」を話題として提示している。「他の人はどうか知らないが、彼については来た」というニュアンス。
彼が来た → 「来た」という出来事の主体が彼であることを強調している。「来たのは彼だ」というニュアンス。
現代文では「〜は」と「〜が」が混在する文章が多く、どちらが主題でどちらが主語かを混同すると筆者の主張を読み間違える原因になります。
図書館に行く → 到達点・方向
図書館で勉強する → 行為の場所
現代文読解で実際に起きやすい助詞の読み間違い
- 「AはBだ」を「AだけがBだ」と読む:「近代科学は西洋で発展した」という文を「西洋だけが近代科学を発展させた」と読んでしまう。「は」は話題提示であり、他を否定していない。
- 「〜によって」と「〜によると」を混同する:「〜によって」は手段・原因、「〜によると」は情報源・根拠を表す。「この結果は実験によって得られた」と「この結果は報告によると正確だ」は全く意味が異なる。
- 「〜さえ〜ば」の係り受けを見落とす:「努力さえすれば誰でも成功できる」という文で、「さえ〜ば」が条件を限定していることを見落とし、「努力すれば必ず成功する」と読んでしまう。
- 長い修飾節の主語を見失う:「昨日から体調が悪くて学校を休んでいた彼が今日ようやく登校した」のような文で、述語「登校した」の主語が「彼」であることを見失い、読み間違える。
助動詞も同様です。「AはBである」と書かれていればそれは筆者の強い断定、「AはBらしい」であれば推量や伝聞、「AはBべきだ」であれば義務や当然を表します。こうした助動詞の意味が分かると、筆者がどこで主張しているのかが見えやすくなります。
また、「彼は本を読んだ」という文で「本」や「読んだ」という単語が難しくて意味が分からなくても、助詞を見れば「彼|は 本|を 読んだ」という構造は理解できます。単語の意味に完全に依存せずに文の関係を追えるのが、文法を使って読む強みです。評論文の難解な語彙が出てくる場面でも、この読み方は有効です。
3. 「日本語は母語だから文法不要」は本当か
「日本語は母語だから文法はいらない」とよく言われます。しかしSNSを見ると、助詞や助動詞を根本的に間違えている人は意外と多いです。文章が下手というレベルではなく、意味が変わってしまうレベルの誤用も少なくありません。
- 「こんばんわ」(正しくは「こんばんは」。「は」は助詞)
- 「全然大丈夫」(「全然」は本来否定語と呼応する副詞)
- 「ら抜き言葉」(「食べれる」→「食べられる」。可能の助動詞の欠落)
- 「私的には〜」(「的」は名詞化する接尾語であり、この使い方は本来誤用)
実は日本語文法は中学校の教科書に載っています。品詞・助詞・助動詞などです。ただ多くの学校では流されてしまうことが多く、中学生の時点ではそこまで深く理解するモチベーションも能力も育ちにくい。授業としてはやっていても、ちゃんと咀嚼できている人はあまり多くないのが現実です。
日本語文法の学習は、英語文法や古文文法と比べてそれほど時間がかかるものではありません。母語なので理解も早く、基本的な内容なら比較的短時間で一通り理解できます。学習コストが低いわりに読解の安定度が上がる可能性があるので、一度やってみる価値は十分あります。特に現代文が極端に弱い人にとっては、むしろ必須に近いレベルの基礎かもしれません。
4. 感覚読みと構造読みのハイブリッドが最強
ただし、すべての文章を文法解析しながら読む必要はありません。普通の文章は普通に読めばいい。しかし分かりにくい文章や重要な部分、問題を解くときの選択肢や根拠になる部分では、文構造を意識する読み方を強めるとよいと思います。
つまり感覚読みと構造読みのハイブリッドです。普段は感覚で読みながら、ここぞという場面で構造読みに切り替える。これができると現代文の安定度はかなり上がります。
- 助詞を見る: 主語・目的語・場所など文の関係が明確になる。
- 主語と述語を意識する: 長い文でも「何が」「どうした」が見える。
- 文の塊で読む: 修飾関係が整理され、読み間違いが減る。
- 助動詞で筆者の意図を読む: 断定・推量・義務など、筆者の主張の強さが見えるようになる。
現代文参考書にはテクニック系のものが多く、日本語そのものの構造を教えるものはあまり多くありません。その結果、現代文はセンス科目・運ゲーと言われるようになっているのではないかと感じています。
そこで実際に読んでみてほしい本が、「日本人のための日本語文法入門」(原沢伊都夫著)です。日本語を母語とする人向けに、主題と主語の違い・助詞の役割・文構造などをわかりやすく解説した入門書で、難しい専門書ではなく読みやすい内容です。大学受験参考書として紹介されることはほとんどない隠れた一冊ですが、現代文の読解が不安定な人ほど、まずこの一冊で日本語の構造を掴み直すべきです。他の受験生がやっていないからこそ、差がつく一冊でもあります。値段も安く、読む時間も短い。コスパという意味でも最優先で手に取る価値があります。
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- ※ 読みやすさも◎
現代文が不安定な本当の理由は、センスでも運でもなく、日本語文法を知らないまま読んでいることにあるのではないかと思っています。英語や古文では当たり前にやっていることを現代文でもやる。それだけで読解の精度はかなり変わるはずです。