「東工大行きたい音頭」という言葉を知っていますか?X(旧Twitter)上で、東京科学大学(旧・東京工業大学)を目指す受験生たちの間で毎年静かに投稿され続けているコンテンツです。爆発的なバズがあるわけではありませんが、10年以上かけて受験界に根付いた、ちょっとユニークな文化です。
本記事では、その内容・元ネタ・X上での広まりの歴史を詳しく解説します。
目次
・2. 東京工業大学(現・東京科学大学)について
・3. 元ネタ:シュレディンガー音頭とその歴史
・4. X(旧Twitter)での広まりの歴史
・5. ミームとしての発展
1. 東工大行きたい音頭とは何か
東工大行きたい音頭は、東京科学大学(旧・東京工業大学)を目指す受験生がX(旧Twitter)に投稿する、合格祈願のような投稿です。内容は毎回ほぼ同じで、以下のコピペが定番です。
受験勉強の真っ最中や、受験が終わって合格発表を待つ期間に投稿されることが多いです。科学的根拠はまったくありませんが、「この音頭をやらないと合格しにくい」「踊ると英語の点数が上がる」といった半ば冗談めかした言われ方もされるほど、一部の受験生コミュニティで浸透しています。
ハッシュタグ「#一日1回東工大行きたい音頭の舞」というものも存在し、1日1回しか踊ってはいけないというルールを設けた投稿や、毎日自動投稿するbotまで登場しています。
2. 東京工業大学(現・東京科学大学)について
東京工業大学は2024年10月1日、東京医科歯科大学と統合し「東京科学大学」として新たなスタートを切りました。俗に「東工大」と呼ばれていた大学で、理工系に特化した国立大学として知られ、難易度は東大・京大に次ぐ国内トップレベルです。
- 正式名称: 東京科学大学(2024年10月〜)
- 旧称: 東京工業大学(通称:東工大)
- 特徴: 理工系に特化した国立大学。難易度は国内トップクラスで、東大・京大に次ぐ位置づけ。
- 統合前の東京医科歯科大学: 医歯学系の国立大学。両校の統合により総合的な科学大学として生まれ変わった。
3. 元ネタ:シュレディンガー音頭とその歴史
東工大行きたい音頭の「音頭」という形式には、物理学の世界に古くから伝わる「シュレディンガー音頭」という元ネタがあります。
シュレディンガー音頭とは
シュレディンガー音頭は、量子力学を題材にした音頭です。量子力学用語をちりばめた歌詞と、それをイメージした振り付けが特徴で、「プサイにファイ、プサイにファイ」という掛け声を繰り返しながら、波動関数ψ(プサイ)とφ(ファイ)を体で表現して踊ります。
- 考案者: 西森拓(現・明治大学特任教授)。東京工業大学物理学科の西森秀稔教授の弟。
- 初披露: 1984年、物性物理学の若手研究者向けセミナー「物性若手夏の学校」の夜の懇親会。
- 内容: 量子力学の用語(超流動・ボース凝縮・フェルミ縮退・経路積分など)が歌詞に登場するコミカルな音頭。
- 広まり方: 夜の懇親会という場で生まれ、全国の物理・理系研究者・学生の間に口コミで広まった風物詩。
大学で物理や化学を学んでいる方なら耳にしたことがあるかもしれません。研究者コミュニティでは定番の存在として知られており、その「音頭文化」が受験生界隈に形を変えて引き継がれたのが、東工大行きたい音頭というわけです。
なお、「東工大の教授が考案した」という情報も見られますが、正確には東工大物理学科の西森秀稔教授の弟・西森拓が考案したものです。西森拓は当時、物性若手夏の学校に東北大学から参加していた研究者でした。
学生にわかりやすく教えるための音頭とも言われていますが、実際には夜の懇親会ということでお酒が入ってみたことで、酔っ払ってできた物理学者特有の一発ギャグ的なノリだった可能性もそう考えられますね。日常的に大学で物理や化学を学ぶ人々にとっては、めちゃくちゃ面白そうですね。
4. X(旧Twitter)での広まりの歴史
東工大行きたい音頭がいつX上で始まったのかを調べると、確認できる限りでは2017年5月15日の投稿が最古のものです。フォロワー200人程度の小規模なアカウントによる投稿で、ほとんど注目されていませんでした。
興味深いのは、その最初の投稿には「京大行きたい」という文言が混在していた点です。同じアカウントによる同年8月10日の投稿で初めて「京大行きたい」という部分が消え、現在広まっているものとまったく同じ文章になりました。ここが実質的な「完成形」の誕生といえます。
確認できる最古の投稿。「京大行きたい」という文言が混在したバージョン。いいねはほぼなし。
同アカウントが「京大行きたい」を除いた現在と同一の文章を投稿。完成形の誕生。
少しずつ他のアカウントが投稿し始める。いいねは多くても10程度で認知度は低い。
毎日投稿するアカウントが現れるなどプチ人気が出始める。現在も同様の状況が続いている。
爆発的にバズったことは一度もなく、いいね数が急増したわけでもありませんが、2017年から現在まで10年近くにわたって毎年投稿され続けているという、じわじわとした文化として定着しています。
5. ミームとしての発展
東工大行きたい音頭はコピペ・ミームとして発展し、いくつかのルールや派生が生まれています。
1日に1回しか踊ってはいけないという縛りを設けた投稿が存在します。なぜそういうルールになったのかは不明ですが、一種のロールプレイとして楽しまれています。
毎日欠かさず東工大行きたい音頭を投稿するbotが作られるほど、定番コンテンツとして認識されるようになりました。
「東工大行きたい音頭をやらない人は合格が厳しい」「踊ると英語の点数が上がる」といった言われ方もされていますが、もちろん科学的根拠はまったくありません。あくまで受験生同士の冗談・ジンクスとして楽しまれているものです。とはいえ、受験には必ず運ゲー的な要素がある以上、「やれることは全部やる」というスタンスで音頭を踊ってみるのも悪くないかもしれません。
東工大行きたい音頭は、シュレディンガー音頭という物理学界の文化を遠いルーツに持ちながら、2017年頃から受験生の間でじわじわと広まってきた小さな文化です。現在は東京科学大学と名前が変わりましたが、「東工大行きたい音頭」という名称と文化はそのまま受け継がれています。東京科学大学を目指している方は、ぜひ一度踊ってみてはどうでしょうか。